HR BLOG

エンゲージメント

『世界一の働きやすさ』で『世界一の品質』を目指す!M&A業界の女性リーダー米澤恭子氏に聞くキャリアの続け方

2019年6月、「M&A」における取引価格の算定を行う株式会社企業評価総合研究所の代表取締役社長に米澤恭子氏が就任しました。もともとは経理担当として親会社である株式会社日本M&Aセンターで働いていた米澤氏。代表取締役社長に就任するまでに、米澤氏が取り組んできたことや、ご自身の出産、育休からの仕事復帰などの体験から得た働く女性へのアドバイス、将来のビジョンまでじっくりと語っていただきました。

出産、子育て、税理士資格取得を支えた家族、同僚、仲間の存在と社長からの手紙

これまでの私のキャリアを簡単にご説明いたしますと、大学を卒業し、新卒で生命保険会社へ入社しました。その後、もう少し手に職をつけられるような内容で、女性が長く続けられる仕事をしたいと考え、会計事務所へ転職しました。そこは前職の生命保険会社とは違い、たくさん後輩が入ってくるような環境ではなく、いつしか新しい仕事にチャレンジする気持ちを忘れてしまっていました。ちょうどそんな時期に、起業している大学時代の先輩から「あなたはもっとチャレンジをしたほうがいい」とアドバイスをいただいたことにも背中を押され、転職活動を行い、日本M&Aセンターの門を叩きました。

日本M&Aセンターでは前職の経験を活かして、経理として東証マザーズ、一部上場実現に向けてがむしゃらに働いていました。その後、出産・産休、子育てと両立して税理士資格を取得しました。税理士資格を取得したことも評価され、企業評価に特化した専門部署の立ち上げ責任者として参画することになりました。2016年にこの部署が日本M&Aセンターから独立して、「株式会社企業評価総合研究所」として設立し、今に至ります。

税理士の資格は会計事務所に勤めていた前職のころから取り組んでいたのですが、ある程度勉強を進めては途中でやらなくなってしまう、という状態を数年ほど繰り返していました。日本M&Aセンター入社後もそのような感じでなんとなく勉強を続けていたのですが、すごい勢いで成長している同社には優秀な後輩がどんどん入ってきて、彼らに刺激を受けました。「自分はいつまで簿記を勉強し続けるんだろう、このままじゃダメだ!」と、その年から本腰を入れて取り組むことができ、無事試験に合格することができました。この時に、どれくらい勉強すれば成果が出るか体感できたので、その後は順調に合格し、今でもいい経験ができたと思っています。

税理士試験は、大学院に進学し修士の学位を取るといくつかの科目は免除になります。私は仕事をしながら通信制の大学院に入学することにしました。通信制だから仕事や子育てをしながら研究ができ、助かりましたね。

大学院で共に税理士を目指す仲間がいてお互い励まし合いながら取り組めたことで、仕事と両立しつつ乗り越えることができました。

企業評価総合研究所 代表取締役社長 米澤恭子氏

よく「子育てと仕事を両立しながらの税理士受験は大変だったのでは?」と聞かれます。確かに、席についてテキストを広げて勉強を…というようなまとまった時間はとれないのですが、なんでも「ながら」でやっていました。たとえば、信号待ちしながら…とか。子供が生まれてからは子供を抱っこしたまま本を読んだり、リビングの机にはいつもテキストを出しっぱなしにして10分あったら勉強したりする、みたいな…(笑)勉強するのに、こういうやり方でしないといけない、というものはないので、フリースタイルでやれる時にやれる量を勉強していました。

子供がいることで、かえって気持ちの切り替えができるので、メリハリをつけて仕事ができました。独身の頃のほうが自分が自由に使える時間はありましたが、かえって時間に制約のある出産後のほうがパフォーマンスが良いのでは、と感じています。あくまで自己採点ですが、子供や家族のために使う時間を確保する意味でも、集中して仕事に取り組めているのではないでしょうか。仕事が終わって夜帰宅して、子供の顔を見ると気持ちが安定して「また頑張ろう!」という気持ちになります。生活の一部に子供の存在が加わったことで、出産前と比べて良いリズムで働けている、と実感しています。

日本M&Aセンターでは、私が初の産休取得者でした。世間一般的には、産休で仕事を離れることに対して不安になるところですが、私の場合は産休に入る前に代表取締役社長の三宅よりお手紙をもらいました。そこには「あなたの仕事はちゃんと用意して待っているから、安心して元気なお子さんを生んでくださいね」という内容が書いてありました。おかげで安心して産休に入り、復職することができました。

産休や育休を取ることに不安を感じている人は、まず「自分の働きやすい環境を整えていく」ことを考えるのが必要だと思います。私の場合は実家のある京都を拠点にして、仕事、出産、育児、資格取得をすべてバックアップしてもらいました。まずは頼れる所に相談しながら進めていくのがよいでしょう。

環境が人それぞれ違いますから一概には言えないですが、復職して会社の支援が受けられないようでしたら、サポートしてもらえる家族の近所に引っ越す、会社を変えるなど、仕事をしながら次の環境や仕事を探すのがいいと思います。仕事のキャリアを一度切ってしまうと次が大変なので、なるべくキャリアを切らさないよう、仕事を続けながら動くことをおすすめします。

嬉しかったのは、分業の概念がなかった「M&A」の中で「企業評価」を認知してもらえるようになったこと

企業評価総合研究所 代表取締役社長 米澤恭子氏

私たちの会社「株式会社企業評価総合研究所」は、企業の「M&A」を進める際に取引価格の交渉基準となる株価算定業務(=企業評価と事業概要研究)に特化しています。これまでは、この「企業評価」の部分も「M&A」のコンサルタントが行っていて、「分業」という概念はありませんでした。当時から企業評価は専門知識も必要ですし、「M&A」における全ての工程を営業が自分で全部行うやり方では、いずれ業務が回らなくなるのでは…と感じていました。

親会社の代表である三宅をはじめ経営陣が「企業評価」の「分業」を考え、専門の部署を設立することになり立ち上げ責任者として参画したのですが、立ち上げ当初は大変でした。これまで「分業」という概念がなかったので、「企業評価」をする部門に業務を依頼するという流れがなかなか定着しませんでした。

そこで「分業」のメリットについてまずは社内で啓発活動をしていくことにしました。私たちが「企業評価」の部分を専門に行うことで、営業は「営業活動に専念できる」と。まずは試してもらうなど、社内営業を続けていくことで、だんだんと理解してもらえるようになりました。

どんどん日本M&Aセンター内で認知、理解してもらえるようになって「企業評価総合研究所に仕事を任せたい」という声が増えていきました。あの時はとても嬉しかったですね。今ではみんなが任せたがりすぎて…、仕事を依頼できる権利を付与するパスポートを発行して、順番待ちしてもらっています。

世間で「中小企業のM&A」が認知されるようになってきて、「企業評価」についても認知されているのが嬉しいですね。成長している実感があります。

代表取締役社長になってからの自分自身の心の変化ですが、これまで以上にすごく「社員への愛情」が増しました。これまでのキャリアの中で「自分が成長したい」という思いでやって来ましたが、「人を成長させたい、そのサポートをしたい」と思うようになりました。

「企業評価」の部署立ち上げの時から、責任者として働くように言われていました。ただ経営者としての経験はまだなかったので、「企業評価総合研究所」として設立した当初は、親会社で税理士、公認会計士を管理する部門の長であった熊谷が代表取締役社長に就いて、熊谷と一緒にいろいろ取り組んできました。設立後3年経ち「そろそろ(あなたに社長を)任せても大丈夫だよね」ということで、代表取締役社長を任せていただきました。

この3年間、熊谷には誰よりもいろいろなことを相談し、会社のあり方などたくさんのことについて意見を交わしました。会社や仕事のことなどじっくり話し合うことができるビジネスパートナーがいて、とても幸せな環境や仲間に恵まれていたと感じています。

お客様にも社員にも、安心して仕事が進められるよう『最高の品質』と『最高の環境』を

企業評価総合研究所 代表取締役社長 米澤恭子氏

私たちの会社はミッションステートメント『誰もが安心して「M&A」ができるように中堅・中小企業M&Aマーケットの健全な成長に寄与する』で表しているように、「M&A」を検討している企業のオーナーの方に寄り添った仕事の提供を目指しています。

最高の品質でサービスを提供していくためには、社員がやらされていると感じるのではなく、自らM&A業界を牽引していくくらいの気持ちで取り組んでもらえるようなマインドを育てていくことが重要だと思っています。

そのために大きく3つの取り組みを行っています。

1.組織が成長していて、社員が次のチャレンジをできる環境であること

会社の規模が成長していかないと、新しい人が入ってこないので、ずっと同じ仕事をし続ける人が増えてしまいます。いつまでも新人がやる仕事ばかりでは、面白くないですよね。優秀な後輩がどんどん入社してきて、今いる社員が刺激を受けるような環境も必要だと思います。弊社でも、この「チャレンジできる環境」をマネジメント上意識しています。

M&A業界は成長が著しく、会社も同様に成長していっています。この業界の成長に合わせて、社員も次の新しい仕事にチャレンジして、キャリアアップしていける環境を会社側でしっかりと整えていく必要があると考えています。

2.成果に対して正当な評価ができるマネジメントが行われていること

今の組織体系として「チーム制」をとっており、1チーム3名前後で全部で8チームあります。基本的に業務の進捗管理は各チームリーダーに任せています。

ひとり一人に目が行き届くようにしながら、成果を数値化して明確にすることで、会社が正しく評価できる状態にしています。しかし、会社としては、成果が出せていない人のことも気にかけられる仕組みにしていきたいです。社員が何に対して困っているのか気付けるよう、マネジメント側が見える仕組みにして、成果が出せるようフォローしていきたいと考えています。

部下を持って人をマネジメントするということは、自分自身も成長できます。人をマネジメントする上で、まずは「ちゃんと話を聞いてあげる」ということが大事です。そして、決して管理しすぎないこと。時には上司として耳が痛いことも言われるかもしれませんが、意見をちゃんと聞いて一緒に考えることが大切です。

何でも自分一人でやろうとするのではなく、責任を任せていって、次のリーダーにも部下のことを考えるよう指導していくのが必要だと思います。

3.ライフステージの変化を支える柔軟な働き方と仕事の成果を両立できる、環境・制度があること

弊社が行っている「企業評価」はとてもニッチな分野で、人が採りにくい状況がありました。あえて女性に限定して求人を狙っていたわけではないのですが、緻密でコツコツと進める仕事なので、そういう仕事に向いている方を求めて、働きやすさ・仕事のしやすさをPRしていたら、結果的に女性が多くなりました。全体の8割近くが女性です。子供がいる方が社員の4割近くいます。

在宅勤務や時差出勤はもちろん、弊社では看護休暇を有給休暇として付与しています。有給休暇は1時間単位で取得可能にしています。時短勤務は法律で規定しているよりも長く、お子さんが小学校4年生になるまで使えます。

会社のイベントとしては、お子さんがいる方が多いため泊りがけの社員旅行は難しいのですが、ランチ会としてホテルのレストランなどに美味しいご飯を食べに行くことがあります。

子育て世代に限らずすべての社員が働きやすいようにいろいろな制度設計をして、仕事に集中してもらえるよう意識して取り組んでいます。「制度を使った人は出世できないのでは…」と、制度を使うことが不利にならないように、成果を「見える化」してきちんと評価される仕組みを取り入れています。

社員が幸福であってこそ、M&Aを行う企業のオーナーの方に寄り添う仕事ができる、と私は考えています。成果を出せば出すほど働きやすい仕組みや、制度を使うことで成果が出せるようなマネジメントを行うことで、男女ともに「世界一働きやすい会社」にしていきたいですね。

「最高の品質を提供できる社員を育てていく」
「そのために最高の環境をつくっていきたい」

それが私のミッションです。

女性社員に活躍してもらいたい人事担当者・経営者の方へ

今後、女性の活躍は大企業だけの取り組みではなくなってきます。
中堅・中小企業であっても育児・介護中の従業員が就業中にパフォーマンスが落ちない仕組み・環境を早期に整えることが重要です。

もし「育児・介護中の従業員はパフォーマンスが落ちる」という固定概念があるようでしたら、それはすぐ捨てましょう。
少なくとも当社においてはパフォーマンスは落ちていません。
固定観念にとらわれ、育児・介護中の従業員がパフォーマンスを発揮する機会を失うことのないようにしていきましょう。

新しい取り組みを始めようとすると、どうしてもできない理由ばかりが浮かんできてしまうものです。
そこで考えることを諦めずに、「どうしたら実現できるか」までをしっかり考えましょう。
おそらく経営陣が会議室で考えるとデメリットばかりが思いついてしまうので、従業員と対話して、会社のみんなで一緒に仕組みを作っていくことが必要だと思います。

まとめ

世界経済フォーラムが公表する、男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数2018」で、日本は149ヵ国中110位と低い順位でした。このような世界的な評価により、「日本は女性リーダーが少ない」と言われる要因の一つです。しかし、今回のインタビュー記事にご登場いただいた米澤氏のように、日本でもさまざまな分野でリーダーとなる女性が増えてきました。米澤氏がここまで来られるには、キャリアを途切れさせることのないよう、育児をしながら仕事を続けてこられたご本人の意志の強さや努力ももちろんのことですが、記事の中でご本人が語られているように親会社の代表三宅氏や前任の代表熊谷氏、ご家族の理解や協力もあったことでしょう。

米澤氏は自らの経験を踏まえつつ「世界一働きやすい会社」にするために、今もさまざまな制度設計に取り組み続けています。産休・育休中、または今後その機会を迎える予定の社員がいて、復職しやすいよう制度の見直しを検討している場合には、きっと同社のライフステージの変化を支える柔軟な働き方と仕事の成果を両立できる、環境・制度が参考になることでしょう。

プロフィール

企業評価総合研究所 代表取締役社長 米澤恭子氏

2005年会計事務所勤務を経て 株式会社日本M&Aセンターに入社。2016年株式会社企業評価総合研究所 取締役に就任。2019年株式会社企業評価総合研究所 代表取締役社長に就任。中堅・中小企業のM&Aにおける取引事例法を研究。同社に在宅勤務制度、時差出勤制度を取り入れ、ライフステージの変化を支える制度設計に積極的に取り組む。2016年7月プレジデントウーマンvol.6「世界のワーキングウーマンはどうしてる?12人のワークライフバランス術」にて取り上げられる。

一覧へ

オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり

『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。
この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。

ダウンロード