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労務110番

従業員が転院を勧められた…… 移送費は保険給付の対象になる?

公開日:2019.3.6

    当社の従業員が、急病のため会社近くの病院に搬送されました。医師から「早急に設備の整った病院へ移るべきだ」と指示されたため、看護師が付き添って移送することになったのですが、本人や付添人の移送費は健康保険組合に請求できるのでしょうか?

    【結論】本人に関しては、『傷病により移動が著しく困難』などの給付要件を満たす場合に移送費が支給されます。

    また、医師が必要と判断した場合については、付添人の移送費も給付対象となります。

    移送費が給付される要件とは?

    移送費は『被保険者が療養の給付(保険外併用療養費に係る療養を含む)を受けるため、病院または診療所に移送されたときは、移送費として、厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支給する』とされています(健康保険法97条1項)。つまり、要件については、以下の項目をすべて満たすことが必要です(健康保険法施行規則81条)。

    (1)移送により、法に基づく適切な療養を受けたこと
    (2)移送の原因である病気やケガにより、移動が著しく困難だったこと
    (3)緊急その他やむを得なかったこと

    また、移送費の支給事由の例として、解釈例規では『現在の医療機関の設備などでは十分診療ができず、医師の指示により緊急に転院した場合』と定められています(平6・9・9保険発119号)。そのため、健康保険組合により『医師により移送を指示されたこと』と『上記項目をすべて満たすこと』が認められた場合のみ移送費が給付されるのです。

    給付される額は?

    では次に前述の『厚生労働省令で定めるところにより算定した金額』について見ていきましょう。

    移送費の金額は『最も経済的な通常の経路・方法により移送された場合の費用により算定した金額とする。ただし、現に移送に要した費用の金額を超えることができない』と定められています(健康保険法施行規則80条)。

    つまり、算定額が実際に要した費用より少ない場合は算定額が支給されます。そのため、差額は被保険者の負担となります。なお、仮に算定額が実際に要した費用より多い場合でも、実際に要した費用が支給されるため注意が必要です。

    付添人が支給対象となる場合

    医師などの付添人の移送費に関しては、以下のように取り扱われます。

    ・医師が必要と判断する場合に限り、原則として1人分の交通費を移送費として支給
    ・医師や看護師に付き添ってもらった場合など、患者が付添人の医学的管理などに要する費用を支払った場合は、移送費とは別に診療報酬に係る基準を勘案して療養費を支給

    なお、移送のための“荷物の宅配料金”は移送費の対象とはなりません。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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