HR BLOG

労務110番

企業にとってリスクあり? 知っておきたい“名ばかり管理職問題”

管理職クラスの従業員から、休日出勤に対する『代休』の付与や残業代の支払いなどを求められました。管理職には通常、労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されないものと考えていますが、その従業員は自分を『名ばかり管理職』だと主張しています。

この場合、代休の付与や残業代の支払いが必要になるのでしょうか?

労基法上の『管理監督者』との大きな違い

一般的に『管理職』というと、部長や課長といった実務上のリーダー職を指しますが、その規定は会社ごとに異なるのが実情です。しかし労働基準法では、ほかの従業員を監督もしくは管理する地位にある者を、後述する一定の判断基準をクリアしたうえで『管理監督者』とし、一般従業員と明確に区別しています。この基準に一致していないのに、肩書だけ役職を与えられているケースが『名ばかり管理職』として問題となっています。いったい、どこが問題なのでしょうか?

管理監督者の判断基準としてまずあげられるのは“経営者と一体的な立場で仕事をしているかどうか”です。従業員の監督や指揮のほか、採用や人事考課、経営会議への参加などの権限や責任がある場合は問題ありませんが、課長という肩書でもそれらがなければ、管理監督者とは言えません。

そして“出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けない”のも管理監督者の条件です。時間を問わず経営上のシビアな判断を求められる管理監督者は、一般的な従業員とは同一に扱うことができないため、出退勤の自由度があり、労働時間を厳密に定めることができません。遅刻などで減給処分になるような場合、管理監督者とは言えなくなります。

モチベーションの低下や離職のおそれも?

管理監督者はまた、“権限や責任を負う地位にふさわしい待遇がなされている”必要があります。

しかし、役付の名がついているだけの『名ばかり管理職』の場合、管理職と一般従業員双方の不利益面だけを被ってしまう可能性があります。

たとえば、会社の従業員Aさんを課長とし、それに伴い給与を20%アップしましたが、実質的な業務比率や待遇は通常の従業員同様とします。

一般従業員なら休日出勤には代休付与か休日出勤手当の支払い義務が、残業には残業手当の支払い義務が生じますが、課長のAさんには適用されません。その結果、Aさんの全体の賃金は30%下がってしまいました。

この場合、Aさんは管理監督者の要件を満たした正しい管理職として優遇されているとは言えません。こうなると、Aさんの仕事に対するモチベーションが上がることはなく、離職にもつながりかねません。

さらに最悪の場合、『名ばかり管理職』として残業代の未払いについて訴訟問題などに発展する可能性もあります。

2019年4月に施行された改正労働基準法では時間外労働に上限が設けられ、一般従業員に長時間残業はさせられなくなったため、そのしわ寄せが管理監督職に及ぶのではないかと懸念されています。

従業員を管理職に任命する場合は、その人をしっかり『管理監督者』と呼べるよう、待遇や権限の取り決めは、労働基準法に則って慎重に進めましょう。

一覧へ