MENU

労務110番

社内でパワハラ発生!被害者、加害者の休業手当の支給はどうなる?

公開日:2019.3.22

    【相談内容】

    社内で深刻なパワーハラスメント(以下、パワハラ)のトラブルがあり、事態を収拾させるために加害者側の社員に数日間の自宅待機を命じました。
    一方、被害者側の社員は精神的な苦痛から、うつ病を発症して会社を休んでいます。
    この場合、加害者側・被害者側双方の社員に対し、休業手当を支払う必要がありますか?

    【結論】

    <加害者の社員に対して>
    パワハラ行為の違法性が強く、懲戒処分の対象として就業規則に明記されている場合は、休業手当の支給は不要です。
    ただし、就業規則に規定がなく、単なる事態収拾のための自宅待機命令であれば、休業手当の支払いが必要になる場合もあります。
    <被害者の社員に対して>
    パワハラが原因でうつ病を発症したことが労災として認定される場合は、休業補償給付を受けられない休業開始3日間について、使用者が被害者の社員に対して、1日あたり平均賃金の60%を支払う義務があります。

    休業手当を支給すべきケースとは?

    “使用者の責に帰すべき事由”により労働者が休業した場合は、休業期間中“1日あたり平均賃金の60%以上の休業手当”を支払う必要が生じます(労働基準法第26条)。

    典型的な例は、以下のとおりです。
    ・設備の故障などによる操業停止
    ・経営難を理由に、社員へ自宅待機を命令した場合 など

    一方、以下の場合には、休業手当の支払いは不要と解されています。
    ・天変地異による事業場の被災
    ・労働者自身の違法行為などによる出勤停止
    ・労働安全衛生法に基づいた、健康診断の結果による休業 など

    就業規則に規定がない場合、加害者にも手当支給が必要!?

    では、休業の理由がパワハラの場合、休業手当を支払う必要があるのでしょうか?
    まず、加害者側の社員に対して見ていきましょう。

    仮に今回のケースが、以下の(1)・(2)に該当する場合は、“労働者の責に帰すべき事由”であるため、休業手当の支給は不要です。
    (1)パワハラ行為の違法性が強い
    (2)パワハラが懲戒処分の対象として就業規則に明記されており、それに基づいて“出勤停止”の処分を受けている

    しかし、とりあえず事態を収拾させるために自宅待機を命じたに過ぎない場合は、“単なる業務命令に基づくもの”であるため、休業手当の支払いが必要になる可能性もあります。

    一方、被害者側の社員については、“休業が私傷病によるもの”として取り扱われるのであれば、労災ではなく健康保険法第99条の“傷病手当金”の支給対象になります。
    (※傷病手当金:業務外の事由による病気やケガの療養のため、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けず、賃金を受けられなかった場合に支給されます。)

    しかし、うつ病の発症が職場のパワハラによることが明らかで、労災として認定される場合は、健康保険法ではなく、労働者災害補償保険法第14条の休業補償給付の対象となります。
    (※労災保険の休業補償給付:業務または通勤中の負傷や病気の療養のために休業し、賃金を受けられなかった場合、休業開始後4日目から支給されます。)

    労災に該当する場合は、被害者が給付を受けられない休業開始3日間については、使用者が労働基準法第76条の休業補填として、1日あたり平均賃金の60%を支払う義務があります。

    加害者と被害者で休日分の支給要件に違いアリ!

    加害者側に休業手当を支払う場合の最低限度額と、被害者側に休業補償を支払う場合の額は、どちらも平均賃金の60%です。
    しかし、加害者側に支払う場合と、労災認定された被害者側に支払う場合とでは、“休日”に該当する日の支給について違いが生じます。

    加害者の休業期間中に所定休日または法定休日がある場合、当該休日については休業手当を支払う必要がありません(昭24・3・22基発 4077号)。
    一方、労災認定された被害者が休業に入った3日間については、休日に当たる日も休業補償の支払いをする必要があります。

    パワハラへの対応については、まず就業規則に定めておくことが重要です。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

    この記事もオススメ!

    一覧へ