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従業員が安心して長く働ける環境づくりを支援したい!見えづらい課題を表出化させるOKANの取り組み

「働く人におせっかいを焼く」ために生まれたという株式会社OKANは、「働きたい人が働き続けられる社会」の実現を目指して社食サービスや企業のハイジーンファクター(衛生要因)の分析に特化したサーベイ・ツールなどのサービスを開発、提供しています。HR事業に取り組む同社では、社内でどのような取り組みをしているのか、コーポレートグループHR・EXチームに所属する中村星斗氏(PRチーム兼務)と手塚ちひろ氏にサービスが生まれた経緯を踏まえつつ、お話をお伺いしました。

望まない離職を防ぐために、働く人にとっての「おかん」のような存在でありたい

Q.「OKAN」の事業は社食サービス「オフィスおかん」から始まり、2019年に入ってからは離職要因サーベイツールである「ハイジ」をリリースされました。このようにHRに関連する事業に取り組まれたきっかけなどありましたら教えてください。

中村氏
サービスの根底にあるのは、何らかの事情で離職せざるをえなかった方たちの「望まない離職」を防ぎたい、という思いです。
弊社のCEO沢木は、起業家輩出企業として有名な会社に新卒で入社し、日々の業務に邁進していました。とにかく働くことが好きな人たちが集まっている会社で、時間さえあれば仕事をしたいという人たちばかり。「仕事に時間を充てたい」と考えた際に、削れるのはまず「睡眠」時間、次に「食事」にかける時間。この二つを削る生活を続けていたのですが、体を壊してしまい一時的に仕事から離れることになってしまったそうです。

彼(沢木氏)の場合は「健康」がきっかけでしたが、視野を広げると、本当は働きたいのに育児や介護などの諸事情で、会社と個人との価値観が乖離してしまい、働き続けることが難しくなってしまった方たちがたくさんいると思います。このような課題を持つ方たちのために、安心して働き続けられる環境作りの支援ができれば、という思いで生まれたのが法人向けぷち社食サービスの「オフィスおかん」というサービスです。

私たちのミッションは「働く人のライフスタイルを豊かにする」というものです。このミッションを実行する存在として、OKANは働く人のあらゆる悩みや課題に対して「おかん」のような存在でありたいと考えています。
企業や人によって課題はバラバラなので、それぞれの状態にあった処置が必要になります。
HRについて課題を持つ企業を、風邪を引いた患者に例えるなら、従業員の不満を見える化する「ハイジ」がどこに原因があるか調べる「診察」で、その結果、福利厚生面で課題があると判明した場合は「風邪薬」として「オフィスおかん」を利用する、というイメージです。

ありがたいことに「オフィスおかん」の導入企業が増え、会社の認知が高まりました。それと同時に、認知されていくにつれ会社イコール「おかん」、食に関するサービスを提供している会社というミスリードが生じてくるようになりました。あくまで私たちは働く人のライフスタイルを豊かにするための支援を行うことをミッションとしています。今の会社の見せ方では、本当にサービスを必要としている方たちに私たちのメッセージが届かないのでは、という思いから、2019年5月に会社のCI(Corporate Identity コーポレート・アイデンティティ)を一新しました。

EXチームは研究開発を行う部門、「健全な衝突」からPDCAを回して成果を横展開していく

Q.海外では、EX(Employee Experience エンプロイー・エクスペリエンス)という「従業員が働くことによって得られる体験」に注目が集まっています。日本国内はまだまだこれからですが、御社にはEXについて専門に取り組むチームがあると伺いました。立ち上がったきっかけや取り組みについて教えてください。

中村星斗氏

中村氏
私たちは、個人の仕事と生活において何を優先すべきか判断する価値観である「ワーク・ライフ・バリュー」を重要視しています。そのためには従業員が安心して働き続けられ、かつパフォーマンスを上げられる環境をつくる必要があると考えています。もともとEX担当が兼任でいたのですが、より戦略的に取り組もうと2018年12月よりコーポレートグループ内にHR・EXチームを発足させました。

HR・EXチームでは、「人」に関わるさまざまな活動を行っています。自社のサーベイ・ツールで「ワーク・ライフ・バリュー」を可視化すると、課題がある部分が浮き彫りになります。その部分に対して改善するための施策を打ち、成果が出ているものは続けていき、運用が難しい、成果が出ない施策は止めて、また新たな施策を打ち出す…とPDCAサイクルを回しています。

弊社とおつきあいのある企業の担当者様はコーポレート部門、総務部などの方が多く、「社内にいろいろな課題があるのに明確にできない」、「いろいろやろうと思っても予算が確保できずに取り組めずマイナス評価になってしまう」といった課題やお悩みをよく聞きました。このような背景から生まれたのが、課題を「見える化」するサーベイ・ツール「ハイジ」です。

EXチームではこのサーベイ・ツールを活用して、社内のどこに課題があるのかを見つけ、数値化します。ネガティブな意見が出た部分に対しては改善施策を打ち、サーベイ・ツールを通じてどれだけ改善できたかについても数値化して説明することができます。社内で実践して改善できた成功事例を横展開して、社外の方にも活用してもらえるようにするのがEXチームのミッションでもあります。

コーポレート部門は「守り」のイメージが強いですが、私たちは「研究開発」部門としてサービスを生み出しています。数値化して改善施策を打つことで、「あれができなかった」「これができなかった」とマイナスになりがちなコーポレート部門の評価を、「この課題に対して○○%数値が改善した」というようなプラス評価に変えられるきっかけを作っていきたいと考えています。

手塚氏
今、国内でEXが重視されない理由の一つには、経営陣がイメージしにくく、「コスト」としてとらえてしまうという背景があると思います。EXをやるために必要なエビデンスが足りないから経営陣もやるべきかどうか判断できない、担当者としては予算がつかないからやりたくてもやれない…など。

社内で抱えている、フワッとした課題を可視化し数値化することで、たとえば産業医と連携する、ストレスチェックを行うなどに理論的かつ具体的に対策とつなげることができるようになります。顧客満足度が上がった実績も改善事例も数値化して示すことで、経営陣にも説明し、判断してもらうことができるようになります。そのためにも多くの企業、経営陣の方にも「ワーク・ライフ・バリュー」という価値観を理解してもらう必要があると考えています。

たとえば実際に社内で行った例としては、オフィスの移転があります。サーベイ・ツールによる結果では執務環境に課題がありました。これまでのオフィスは70坪のスペースに50人という広さでしたが、新オフィスに移転した今では一人あたり2.5倍の広さになっています。移転のタイミングで仕事内容に合わせて働く場所や机・椅子などを自ら選ぶことができる「ABW (Activity Based Working アクティビティ・ベースド・ワーキング)」も導入しました。インターネットがつながりにくいといった問題点も改善しました。オフィスの移転については移転プロジェクトのメンバーが中心になって、外部と連携して進めましたが、内装についてはEXチームのメンバーも一緒に入って提案しました。

手塚ちひろ氏

中村氏
サーベイ・ツールの定点観測から見えた課題に対してEXチームから主体的に動いて施策を出すケースもあれば、社員から意見をもらって施策に反映させるケースもあります。毎月1~2個は必ず何かしらの新しい案が出ますね。全社的にいろいろ意見が出やすい雰囲気だと思います。

ですが、新しいことを始めるよりも、やり続けることのほうが難しいですね。実際にやり始めると成果が出てよかった施策もあれば、運用が難しいとわかる施策もあるので、いろいろ試行錯誤しながらPDCAを回しています。

好評だったのは、従業員が安心して健やかに働き続けられる環境作りの目的で、「健康」に特化した制度をまとめた「すこやかパック」の中の「スヤスヤまくら補助」ですね。睡眠の質を改善するにはよい枕が必要なので、3万円を上限として購入費用を補助する制度です。

手塚氏
逆に反響がいまいちだったのが、同じく「すこやかパック」の「テクテクさんぽ給」ですね。仕事をしているとずっと座りっぱなしになってしまうので、従業員の健康を意識して運動を促進させる目的で始めました。男性は9,000歩/日、女性は8,000歩/日歩いた日数が基準を満たせば有給休暇を1日提供するという施策です。いざ始めてみたら、カウントをどうすればよいのか運用が面倒くさくて…、まず運用がかんたんでないとなかなか続けられないですね(笑)あと家庭にお子さんがいる方は、仕事の前後に歩く余裕などない、という意見もありました…。そこはさまざまな環境にある方の事情にまで配慮が足りなかった、という運営側の反省点でもあります。

まだ成功とも失敗とも言えず、賛否両論あるのですが、今進めている施策で成長支援のための「レベルアップ制度」というものがあります。「レベルアップ制度」とは各自の役割を明確にし、公平な評価を行うことで従業員の成長を促進させるものです。元々は評価制度をつくろうという目的でスタートしたものです。評価にあたり、経営陣も従業員も「全員一緒」という評価はしたくないし、されたくないと思います。従業員のインサイトを見ていくと、みんな「会社の期待に応えたい」という考えがあることがわかりました。それで、その気持ちを促進する制度としてこの「レベルアップ制度」を立ち上げようということになりました。

今後弊社では「360度評価」をしていくにあたり共通の評価軸が必要になるため、誰がどんな役割でどのレベルにあるのか、各グループの責任者たちと共通認識をとったうえでそのレベルを全社公開しました。個人名でレベルをオープンにしているので、誰がどのレベルにあるか全員知ることができるのですが、その時に「なぜこの人がこのレベルなのか」「自分はこのレベルだと思ったのになぜそれより下なのか」と疑問が出てきまして…。

しかしこの意見が出たこと自体はよいことだと考えています。今、組織の変革期にある中で、会社の考えや方向性に合わない人も出てくるかと思います。これまでは退職者が出た時に「なぜやめてしまったんだろう…」と問題が表出化しないままでした。しかし、この制度を始めたことにより「合わない」と考えている人がいるという課題が見えるようになりました。このような課題が表出したり、いろいろ意見が飛び交ったりすることが、私たちが重視している価値観の中の一つでもある「健全な衝突」です。

「ななめの関係」から組織に馴染んでもらうOKAN流オンボーディング

Q.全社的に意見が出しやすい雰囲気とのことで、どんな方が入社されて、どのように社内コミュニケーションをとられているのか、具体的な施策がありましたら教えてください。

左:中村星斗氏、右:手塚ちひろ氏

手塚氏
まず入社前に会社に対して抱いているギャップを埋めるよう、丁寧に説明するようにしています。HRに関する事業を行っている会社ですと、働き方改革の影響からリモートで仕事ができる、残業が少ない、など楽ができるように思われがちなのですが、そうではない部分もあります。私たちはステークホルダーとの約束を果たす意味でも成果にコミットするため、残業がまったくゼロというわけにはいかない部分もあります。リモートも便利ではありますが、仕事の内容によっては対面で話したほうが確実で早い場合もありますし、イメージが先行されてしまう懸念があります。どんな考えでどんな目的で仕事をしているのか、知ってもらうことが大切だと考えています。

中村氏
今のところ新入社員はすべて中途入社の方たちばかりで、新入社員は採用していません(2019年6月取材当時)。OKANの考え方、社風、キャリアパスなどが、求職者の方と合うか合わないかの基準は明確にしています。たとえばスペシャリストのような職務、OKANでマーケティング職だけを極めていきたいという場合は、あまり合わないと思います。お互いに譲れるところと譲れないところの優先順位をはっきりさせておくことで、入社後のアンマッチを防いでいます。もともと退職率が低い会社ですが、ここ数年はほぼ退職する人はいませんね。ネガティブな理由で辞めていく人もほとんどいません。

OKANではマネージャー職をなくして1年くらい経ちました。当時は役職として社長と各グループの責任者がいました。私たちは全社会議のことを「家族会議」と呼んでいまして、一度今後OKANをどうしていきたいのか全員で10時間以上議論しました。その時の打ち合わせで最適な組織形態を考えました。今、各グループの責任者が部門を牽引するメンバーとして「リード」という役割を持っています。役職と言うよりもマネジメントの役割を果たすという意味合いが強いです。

社内会議の運営や新たに入社した人の歓迎などは、有志のメンバーが集まったプロジェクトで運営しています。新入社員を迎えるにあたり、所属するグループとは別のグループのメンバーで入社時期が先輩にあたる人をアサインして、一緒にランチを食べるなど早く組織に馴染めるようサポートしてもらっています。このような人選にしているのは業務上のつながりだけでなくフランクに話せる人が社内にいた方がよいからです。仕事ばかりに専念しているとグループが違う人の間では接点がほとんどなくなってしまうため、部門をまたいで社内全体でコミュニケーションをとりやすくする目的で「ななめの関係」を意識してもらっています。

手塚氏
社内コミュニケーションという面ではベーシックな施策ではありますが、部活動の成果が上がっています。放っておくと弊社の場合、グループ間の交流がないままになってしまうので、三部門以上にまたがって部員が参加することと、活動の様子がわかる写真をslack(コミュニケーションツール)で共有することを条件に補助を出しています。

今うちにあるのはサウナ部、ビール部とか、なかなか楽しそうに活動している様子が写真で送られてきます…(笑)。体育会系、文化系でも条件を満たしていればジャンルは問いません。部活動をきっかけに部門をまたがった交流ができるようになったのがよいですね。

まとめ

「コーポレート部門は研究開発部門」とお話しされるように、「攻め」の姿勢で自発的にさまざまな施策を打ち出し、PDCAサイクルを回し、数値で結果を把握したうえで成果が出た施策をサービスに反映させていく株式会社OKANのHR・EXチーム。「ダメだった施策もそれはそれで一つの結果だから、その施策は止めてまた新しい施策にチャレンジすればよい」というコメントのように、失敗を悲観的、否定的なものと捉えず次の施策の反省として活かしている様子が印象的でした。
何か新しい施策など始める時は、社内でいろいろと軋轢が起こる場合もあるかと思います。そのような時は、同社のように「健全な衝突」を繰り返して、小さなことからでもまずは何かアイディアを形にして始めてみてはいかがでしょうか。ただやるだけでなく成果を見える化して振り返ることで、より施策の精度が高まっていくことでしょう。

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