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平均残業時間が驚異の7.6時間! カルテットコミュニケーションズの残業削減の秘訣(前編)

「“残業は定時までに仕事を終わらせられない人がやること”。今ではこの考え方が社内の常識となっています。」と語ったのは、株式会社カルテットコミュニケーションズ(以下、カルテットコミュニケーションズ)の代表取締役 堤大輔氏。

中小企業のリスティング広告の運用代行に特化した事業を行っている同社は、2019年の全社員の月間平均残業時間が驚異の7.6時間(1日35分程度)と、広告代理店業界の月間平均残業時間の78.6時間を大きく下回っています。

非常に高い生産性と効率性を実現する同社は「世界一効率的な広告代理店になる」という経営ビジョンを掲げています。2018年には第4回ホワイト企業大賞において特別賞「笑顔が生まれる経営賞」を受賞されていることもあり、今広告代理店業界で注目されている企業の一つです。

今回は、堤大輔氏に残業時間をここまで大きく減らせている秘訣や残業を減らすための考え方などについて伺いました。


大切なのは会社として統一した理念を共有すること

「世界一効率的な広告代理店になる」というビジョンを掲げるようになったきっかけは、「広告代理店の仕事は楽しいからこの業界に入ってきてほしい」という思いがあったからです。ですが、昨今「広告代理店はブラック企業の代名詞」だと思っている⽅は⼤勢います。そういった考え⽅を払拭するために、「業界のことをどうこう言うのではなく、まずは自分たちが世界一効率的な代理店になってこの業界のイメージを少しでも上げていこう」と思い、このビジョンを掲げました。

実は、もともと私⾃⾝、仕事が好きで先へ先へと進めたいタイプで、残業時間など気にせずバリバリやっていたほうですので、個⼈的には残業があまり苦にはならないタイプです。ところが、当社のNo.2が“残業否定派”で「残業は定時までに仕事を終わらせられない⼈がやること」という考えでした。

そもそも残業は法定の範囲内であれば違法なものではなく、適切な残業をきっちりやる会社があってもいいし、残業ゼロの会社でももちろんいいし、それぞれの会社の価値観で扱えばよいものだと思っています。ただ、一つの会社の中に残業に対して違う考えが混在している状態はよくありません。残業していると褒められるときもあれば、怒られるときもある、そんな状態はダメですよね。

ではどうするか?そこで重要だったのは、「私がこの会社をどんな会社にしたいか」ということ。「残業が苦にならない」というのは、あくまで私個人の感情です。しかし、会社という目線で言えば、この会社で出会った人とできるだけ長く一緒にいろんなチャレンジをしたいし、僕が死んでも長く続く会社であって欲しい。そう思ったとき、個人の感情を捨て、残業が少ない効率的な会社を目指そうと決めました。

具体的にやったこととしては、「世界一効率的な代理店になる」という経営ビジョンの策定や、月間の平均残業時間の対外的な公開、会議時間を短縮するためのルール決めなどさまざまな取り組みを行ってきました。今では、残業への考え⽅が全社に⾏き届いているので、残業をしていると「頑張ってるな︕」ではなく、「どうしたの︕︖」といった感じになります。

“賞与の増額”と“チャイム付きの時計”で残業削減の文化をつくる

よくセミナーで講演していると、多くの経営者の方から「どうやって残業を減らせばいいですか?」といった質問をいただきます。

そのとき必ずお答えしている2つの施策が、“残業が少ない人の賞与を上げること”と“チャイム付きの時計を使うこと”です。弊社は残業を減らす施策を多く実施しているのですが、この2つはそのなかでも特に効果があると実感しています。

まず、“残業が少ない人の賞与を上げること”は、創業当時からやっています。残業代をきっちり出していると、残業をしている人のほうが年収が高くなり、能力が高く残業が少ない人のほうが給料が低くなってしまいます。残業が少ないことは、その人の成果に結びついていることなので、賞与額を上げることにしました。この制度があることで、残業を減らすメリットが従業員にとってわかりやすく、直接評価に結びつくので、“残業をすることはかっこ悪い”という弊社の文化形成に役立っています。

次に、“チャイム付きの時計を使うこと”ですが、普段仕事をしていると、集中していて時間に気付かないことがあると思います。従業員が残業を始める前に定時を知らせないと、気が付いたら定時を過ぎていて、しなくてもよい残業をしてしまうことになりかねません。経営者の私からすると、無駄に残業代を支払ってしまうことにつながります(笑)。残業を減らす施策としてこれは特にオススメです。弊社では、始業時、お昼休みの開始時と終了時、予鈴(17:55)、定時(18:00)に5回チャイムを鳴らしています。定時にチャイムが鳴るだけでは、提示になった瞬間に就業時間だと気が付くので、勤怠打刻をするまでに数分の残業時間が無駄に発生します。なので、「予鈴が鳴ったら帰宅の準備を始めてもいい」と従業員に伝えて、極力無駄な残業が発生しないようにしています。

また、ここ最近実験していたこととしては“離席時間の把握システム”です。オフィスに⼊室したときと退室したときに、従業員の顔をカメラで認識できるAIを使い、誰がいつ何回⼊退室したのかがわかります。これにより残業時間はもとより、従業員の離席、厳密に言えばオフィスの外にどれだけ出ているかが把握できるようになります。そうすれば、「タイムカードを切っているが、まだオフィスに残って残業をしている」という事態を防げるのはもちろん、たばこ休憩の時間と回数などもわかります。
弊社の例で⾔うと、残業を1時間しているのに、たばこを吸うために一日合計1時間半の間、オフィスを出ていっている⼈がいました。今までのアナログな⽅法だと、私が「今⽇たばこ休憩の回数多くない︖」と聞いても、「そんなことないですよ」という具合にはぐらかされてしまいます。
しかし、このシステムがあれば、明確な証拠が残っているのでごまかせません(笑)。

このシステムから出た記録や数字を元にして、「この休憩の時間を減らすと残業も減らせるよね」といった建設的な話し合いができるようになります。残業代をきっちり払う施策と組み合わせると、「会社に対してコストがこれだけかかっている」ということを社員に理解してもらうことができ、どうすれば残業を減らせるのか具体的な対策を立てることができます。このシステムも試しで実験しただけに過ぎませんが、今後もいろいろな取り組みをしていきたいと考えています。

残業削減に取り組むことは経営全体によい効果をもたらす“攻めの施策”

他社の経営者の方へアドバイスをするとしたら、残業を減らすためにやったほうがいいことは2つあります。

まず一つは基本的なことですが、“みなし残業制をやめて残業代をきっちり払うこと”です。経営者の方は「残業を減らしたい」と考えますよね。しかし、みなし残業などで残業代をダイレクトに支払っていないと、従業員は「コスト面で会社に迷惑をかけている」という考えを持てるようにならないと思います。残業を減らすように従業員に言っても、「残業を削減するメリットがないし、仕事が終わらないから残って終わらせる」と考えます。

しかし、残業代をきっちり出していると、「残業をすると会社にこれだけのコストがかかるから残業を減らしてほしい」というように、従業員と対等に残業削減について話ができます。この施策をしていない企業が意外と多いと感じます。

そして、もう一つは“経営者自身が社内の残業時間を把握すること”です。経営者の方から残業時間の削減について相談を受けるのですが、どの部署の残業時間が多いのかわかっていない方が多くいらっしゃいます。残業を減らしたいという気持ちだけが先行してしまっていて、どこの部署の残業時間が多いのか、なぜ多いのかを把握しなければ、減らしたいものも減らせません。

まずは各部署の残業時間を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。残業時間を把握することで初めて、残業の多い部署にアラートを出す、一人ひとりの業務量を見直すといった改善につなげられます。

今は「働き⽅改⾰」という世の中の後押しがあるので、残業時間の削減に取り組みやすいと思います。「残業を減らさないといけないけど、勤務時間が減って会社としてはマイナスで世知⾟いよね」と、残業削減について後ろ向きにとらえる中⼩企業の経営者の⽅が多くいらっしゃいますが、実は中⼩企業こそあえて残業削減に取り組むべきだと私は思います。

なぜなら、中⼩企業は⼤⼿企業と⽐べると名前が知られていません。そこで、働き⽅改⾰の波に乗り、率先して残業の削減に取り組み、社員の業務量を適切なものにすることで、離職者を減らし、採⽤時の応募者も集まるので、採⽤のコストも減らせたり、メディアにも取り上げられやすくなったり、何かの受賞につながるなど、メリットが多くあります。残業削減に取り組んでいる中⼩企業はまだ少なく、取り組むだけで⽬⽴つことができるので、いち早く取り組むべきだと思います。

会社全体の⽅針を決めたり、やらない業務を決めたりするなど、残業削減のためにやるべきことは多く、⼤変だと思います。しかし、必ずメリットを得られる“攻めの施策”なので、ぜひ多くの企業で取り組んでもらいたいです。
もしテスト的に成果報酬とかで残業削減コンサルティングをさせてもらえる先があれば、Facebookやtwitterでお気軽にお声がけいただきたいですね。

まとめ

「世界一効率的な広告代理店になる」というビジョンを掲げ、全社で残業を徹底的に減らすための文化が根付いている株式会社カルテットコミュニケーションズ。今では「残業をすることが恥ずかしい」という文化まで出来上がっているくらい、時間やコストに対する考え方や理念が全従業員に浸透しています。

働き方改革という追い風がある今の時流だからこそ、残業削減に取り組むと多くのメリットを受けることができます。具体的には、残業時間を把握する、残業代を出す、施策をつくり実行する、業務内容を見直すなど、できることから始めてみてはいかがでしょうか。


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