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元Googleピョートル氏&メルカリ・ユーザベース担当者が語る 急成長企業が取り入れるOKRの実践的活用術

「OKRにはいろいろな要素があると思いますが、メルカリがOKRを導入した最大の理由は、とにかくストレッチな目標、高い目標を全社で達成させたいからでした。」と語ったのは、株式会社メルカリの岩田翔平氏。

2019年12月6日、組織開発等の支援を行うプロノイア・グループ主催のMirai Forum、「さよなら、成果主義!OKRで未来の組織変革をはじめよう」が、「HR BLOG」を運営、提供する弊社、株式会社アックスコンサルティング(東京・恵比寿)にて行われました。

本セミナーでは、前半にOKRに関するパネルディスカッション、後半に1on1に関するワークショップが行われました。今回はその模様を前・後編に分けてそれぞれご紹介します。

前編は、各社の具体的なOKRの実践手法や、OKRを通じた組織開発や社員育成について活発な議論が交わされたパネルディスカッションの様子をお届けします。

登壇者は、
プロノイア・グループ株式会社 ピョートル・フェリクス・グジバチ氏、
株式会社メルカリ 岩田翔平氏、株式会社ユーザベース 山田聖裕氏、
株式会社アックスコンサルティング 広瀬元義の4名で、
モデレーターはプロノイア・グループ株式会社の星野珠枝氏が務めました。

当日は60名を超える多くの方にご来場いただき、OKRへの関心度の高さがうかがい知れました。

会場となったアックスコンサルティング(東京・恵比寿)

今、成長企業がOKRを導入する理由

株式会社メルカリ 岩田 翔平氏(以下、岩田氏):
OKRにはいろいろな要素があると思いますが、メルカリがOKRを導入した最大の理由は、とにかくストレッチな目標、高い目標を全社で達成するためです。
メルカリは「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」という世界を視野に入れた大きなミッションを掲げているため、各部門毎の目標ではなく、全社で1つの大きな目標を立て、そこにチャレンジしていく必要がありました。その大きな目標を達成していくためには、全社で目指していくべきOKRを立てて、そこに向かって社員全員が束になって挑戦していく。OKR導入は自然な流れでした。

株式会社メルカリ 岩田翔平氏

株式会社ユーザベース 山田 聖裕氏(以下、山田氏):
ユーザベースは「経済情報で世界を変える」というミッションを掲げています。
このミッションに紐付けて自分のチームには何ができるだろうかとドリルダウンして目標を設定していくことができるという考え方が運用しやすいと感じたので、導入を決めました。

通常、経理・労務・総務などのコーポレート部門はミスなく仕事を遂行することが求められます。しかし、それらの業務にKPIを設定しても、ワクワクしないと思うんです。事業部が急成長してチームのワクワク感が高まる一方で、コーポレート部門はどこか置いていかれているような雰囲気がチーム内にありました。これらを払拭することも導入を決めた理由の一つです。

株式会社ユーザベース 山田聖裕氏

株式会社アックスコンサルティング 広瀬 元義(以下、広瀬):
アックスコンサルティングでは、約14年間KPI・KGIでの評価を行ってきました。その中で最も課題に感じていたことは、社員がチャレンジングな目標を掲げようとしたときに難しい部分があるということでした。並行して実施していた1on1では、KPI・KGIの数値の進捗確認をしていましたが、これは、時に成果に対して上司が部下を詰めるような形になってしまうこともしばしばありました。これらを改善し、より社員主体のチャレンジングな文化を作っていくためにOKRの導入を決めました。
KPI・KGIの目標管理手法はあくまで人を管理するための手法である一方、OKRは人を育成する仕組みであると、私は考えています。

株式会社アックスコンサルティング 広瀬元義氏

プロノイア・グループ株式会社 ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル氏):
マネジメントという観点で考えたとき、リソース・お金・時間は管理するべきだと思いますが、人を管理することはできないと思っています。実際に私も自信を持ってできているとは答えられません(笑)。そのためにOKRで指標を定めて、その指標に向けて部下が自ら向かっていくというプロセスをいかに構築していくかが大切ではないかと感じています。

OKRの価値を突き詰めて考えると根本的には、現場の社員ひとりひとりの”目標設定能力”を高めることにあります。社員が自ら目標設定をできるようになれば、結果として社員の自発性や主体性が育まれることになりますよね。

プロノイア・グループ株式会社 ピョートル・フェリクス・グジバチ氏

組織の可能性を引き出すOKRの設定と導入事例

山田氏:
ユーザベースの事例でいうと、一番わかりやすいのが総務部の事例です。OKR導入時に総務部が設定したものが、「プロジェクトウユニ」と「プロジェクトカリブ」という2つのO(Objectives)です。

1つ目のプロジェクトウユニというO(Objectives)には、ウユニ塩湖のような綺麗なオフィスを実現させたい、社員全員が気持ちよく働くことのできる環境を目指したいという意味を込めています。例えば、毎月掃除当番を割り当て、全社に協力を仰ぎながら実現を目指しています。

2つ目のプロジェクトカリブというO(Objectives)は、カリブにいても仕事ができるような環境を目指すという意味です。これは総務がいなくてもと会社業務がうまく機能するような仕組みづくりを行いたいという願いを込めています。
以前は内線の取次は総務が行なっていましたが、内線電話を廃止して各社員にIP電話を付与することで、余分な仕事を少しずつ減らしていくことができています。
今では総務部は「ワクワクチーム」という名前に変わり、総務部はもちろん、全社員をワクワクさせるという使命のもと、さまざまな社内施策を打ち出しています。社内にカフェを作ったり、インスタグラムのアカウントを作成し、「ワクワクPR」と名付けた総務部のPR活動も行なったりもしています。

〇〇事業部で掲げているO(Objectives)のムーンショットは、彼らにとっては設定するイメージを持ちやすいのですが、コーポレート部門ではなかなか難しく思います。それぞれの部門がそのスタイルにあった形で、ワクワクしながら自分たちが1番ハッピーに働けるためのO(Objectives)を立てるということが、やはり重要なのではないでしょうか。

岩田氏:
メルカリで特徴的なのは会社全体のOKRに対して、コーポレート部門もコミットしてOKRに取り組んでいることです。現在、メルカリは日本とアメリカで事業展開を行っており、全体の9割ものリソースをアメリカの部門に割くことがあります。その際に、アメリカの部門と日本のプロダクト側の部門とのコミュニケーションを円滑にする必要があるのですが、そこへコーポレート部門が介入し、全社のコミュニケーションをより円滑にする役割を担うことがあります。全社で達成すべきO(Objectives)に対して、コーポレート部門が積極的に他部署をサポートをしているような構図です。各部署のOKRが全社的に一つのOKRに統合していく流れを構築することが設定の際のポイントの一つになると考えています。

ピョートル氏:
プロノイアグループではクライアント様を「パートナー企業」と呼びますが、1つ目のO(Objectives)は「パートナー企業や社会にインパクトを与えられるか」ということです。2つ目のO(Objectives)は「学びがあるか」というものです。OKRを設定することで1人の従業員の学び、そしてチームの学びにつながるかどうかを重要視しているということです。そして3つ目のO(Objectives)は「売上にどのくらい結びつくか」です。我々は会社としてもちろん利益を上げる必要があるので、これも指標の1つに組み入れています。

組織OKRと個人OKRのすり合わせを行い、納得度を高める

広瀬:
まず、会社が社員を雇って人事部が管理するという前提が崩れ始めています。社員の自己実現を考えていくと、会社と個人はWIN-WINの関係性でなければいけないと思います。会社が社員のことを心から思っている、考えているような環境の中でなければ、自己実現はできないはずです。利益とは創造性の総和であり、社員の創造性を取ってしまったら会社の持続的な成長は不可能です。会社と社員のOKRが少しずつ重なっていくことで徐々にOKRが機能してくるのではないかと考えています。

岩田氏:
メルカリでは、お互いのOKRをすり合わせるために1on1を非常に大切にしています。1on1の中には必ずバリューを入れるようにしています。メルカリでは前述の高いミッションを達成するために3つのバリューを掲げています。それは、「Go bold(大胆にやろう)」 「All for one(全ては成功のために)」「Be a pro(プロフェッショナルであれ)」の3つです。

目標設定において、達成可能ないわゆる‟置きにいった”ような目標設定をする社員も時々いるのですが、そういった場合は、「Go bold」な目標になっているのかを問いかけています。OKRの目標は、必ずしも全て100%で達成しなくてはいけないものではないので、達成度が50%くらいになるような難易度の高いものも目標の中に組み入れるようにしています。
このように、バリューをもとにコミュニケーションを取り、目標達成に向かって社員全員が行動できるように心がけています。

OKRを通じた社員の自己実現を目指して

ピョートル氏:
まず、「自己実現=自分にしかできないことを世界にもたらしていく」という考えだと思います。
それには4つのステップがあると考えていて、1つ目は「自己認識」、つまり、自分がどんな人で何を実現したいのか、自分のミッションやビジョンに沿って何を大切にしているのかをしっかりと見極めることで、これが一番大切だと言っても良いでしょう。2つ目は、自分の考え方や価値観を周りの人たち共有して知ってもらう「自己開示」です。それを継続的に行うことで自己表現につながっていきます。すると3つ目のステップとして、少しずつ自分の「コアメッセージ(=自分の軸)」といったものが生まれてきます。最後に4つ目のステップとして、自然と「周りに仲間やサポーターが増える」、つまり、自分のやりたいことの実現がグッと近づくという流れです。
これらが自己実現の4つのステップです。このステップを回していくことで自分に自信がつきますし、自己肯定感も高まります。

岩田氏:
メルカリでは自己実現の支援のためにティーチングをしないことを重視しています。一般的な目標設定の手法だと、ある程度の答えが既にあり、そこに向かってマネージャーが引っ張るという仕組みが確立されていると思うのですが、メルカリではそのような部下へのティーチングはせずにコーチングをするということを大切にしています。
一般的に、ティーチングとは具体的なアドバイスを通じて、部下の思考や言動を方向づけることを指すのに対し、コーチングとはアドバイスではなく、「適切な質問」を通じて部下の自発的行動を促すことを指します。
そのために私も毎月1度、外部講師からコーチングの研修を受けています。そこでは「今どういう心境ですか」「困ってることはありますか」「達成したいことはなんですか」という問いかけを通じて自分自身のことを引き出してもらっているのですが、私もそれと同様のことをメンバーに対しても行っています。ですから、各社員が「何を本当にしたいのか」ということについては、マネージャー側から一方的に答えを差し出すのではなく、対話の中ですり合わせていくことが大切ですし、マネージャーとして重要なスキルだと思います。

組織にOKRをいかに浸透させるのかが課題に

セミナー終盤では、OKR導入にあたって起こりやすい失敗談がとりあげられました。
いかにして、これらの問題に対処していくのか意見が交わされました。

OKRのよくある失敗談
①導入の目的が曖昧で理解されていない
②経営層の中で足並みが揃っていない
③この上司と1on1をするのがいやだ
④マネージャーが組織OKRを理解できていない
⑤やらなくても評価が下がるわけではない

山田氏:
私がOKRを導入する際に、最も大切だと思うのことは、ある程度トップダウンで組織に浸透させていくということだと思います。そのためには取締役や人事部長レベルの人を巻き込んでいく必要があります。また、他社の成功事例の共有や社内での勉強会、ある部署だけでのスモールスタートなどを通じて口コミ的に全社へ制度の良さを広げていくのがポイントになるかと思います。

広瀬:
OKRはやらなくても評価が下がるわけではないのは確かですが、それを浸透させるためには全員でOKRを設定して、それを社員の前で発表しあうような機会を設けてみるというのも効果的ではないでしょうか。アックスコンサルティングでは、新年にそのような機会を設ける予定です。OKRの失敗は、その目的を間違えることによって起きてしまうと思います。OKRは社員を評価するための目標設定ではなく、あくまでも社員の成長を育むものだということを認識することが大切だと思います。

“OKRはアート領域”、運用しながらキレイにする

山田氏:
OKRの導入にあたり、メルカリさんとGoogleさんなどすでに導入されていた企業さんへのヒアリングを行ったのですが、ヒアリングを通じて学んだことは、OKRには答えがないということです。特に印象的だったのは、とある方から聞いた、”OKRはアート”ということです。
OKRはマネージャーのさじ加減によって、達成するかどうかが決まります。そしてマネージャー自身の評価も決まります。これはマネージャーの目標設定の能力に左右される部分も多く、まさにアートの領域だと感じました。そして私自身、OKRはそういう領域のものなんだなと割り切った気持ちも生まれました。そして、ひとまずやってみよう、運用しながら変えていこうといったアプローチを取っていきました。

ピョートル氏:
ここで注意したいのが、単に成長企業を見習ってOKRを導入し、社員に対して自由に目標を設定するように促してもうまくいかないということです。まずはじめに、設定に時間がかかりすぎてしまうという問題が起こりえます。私の経験則から言うと、導入1期目は社内で混乱を引き起こしてしまうことが往々にしてあり、OKRの設定には時間がかかります。これは上司の目標設定能力が欠如していることにも起因していることもあります。
しかし、時間をかけてでも、OKRを運用しながら修正を加えていくことで、導入3期目を迎えるあたりになるとキレイなOKRの実現に近づいていくことが多いです。

必ずしも「OKR」という言葉は使わなくてもいいのです。ポイントは、上司が部下と一緒に目標を決めて、部下とともに目標を達成していくことです。そして部下自身が目標に責任感を持つこと、自ら目標設定ができるようになることへつながり、結果として自発的に働くことができる部下を育むことにつながるのです。
私からの最後のメッセージとしては、OKRは導入することがゴールではなく、社員の行動を形作ることができるツールであるということです。社員にこんな行動をとってほしい、こんなアウトプットをしてほしい、などと社員を成長させるツールなのです。毎週最低1回は1on1を実施し、マネージャーが頻繁にメンバーと会話をして、継続的にコミュニケーションを取らないとOKRでの大きな効果は望めないでしょう。

岩田氏:
私は、noteやTwitterでも、OKRの運用について発信していて、経営者や人事担当者などからご相談をいただくことがあるのですが、その中で気付いたことがあります。
それはOKRはアライメント(連携していくこと)を重要視していることです。始めは社員がやりたいこと、達成したい目標を掲げるのでそれぞれの目標がバラバラなんですが、徐々に全社で達成したい1つ目標へ収束していき、分かりやすい成果をあげるということもあるかと思います。「OKRは運用していくと少しずつキレイになっていく」ということはものすごく共感できますね。

ピョートル氏:
芸術家が彫刻を掘るときに、不要な部分を躊躇なく削っていくことがあると思いますが、OKRも同様で、1on1で上司と部下がすぐにすり合わせを行えるぐらいに、上司からみても単純明快で進捗が確認しやすいOKRの設定が理想だと思います。

まとめ

OKRの運用手法は企業ごとによって異なり、最適解は存在しません。導入の際には自社での目的を明確にしたうえで、組織OKRと個人OKRを1on1を通じて頻繁にすり合わせ、組織と社員の目標に一貫性を持たせることが大切です。まずは自社での目的管理手法を見直し、課題がないかを再確認してみることも効果的でしょう。

後編では、本パネルディスカッションの後に行われた具体的な1on1の実践法についてご紹介いたします。

 

今回のポイント

  • OKRはコーチング、教えるのではなく問いかけること
  • OKRの価値は、現場の社員ひとりひとりの”目標設定能力”を高めること
  • OKRは導入がスタート、運用していくことでキレイになる
  • OKRはアート、シンプルに削ぎ落とし、分かりやすくを心がけること

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