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人材育成・開発・研修

日本人から見た日本企業と海外留学生から見た日本企業の違い

公開日:2019.7.17

    みなさん、はじめまして。株式会社HRファーブラという会社で人材、組織マネジメントに関するコンサルティングを行っている山本紳也と申します。
    私は毎週水曜日を「先生の日」と設定し、早稲田大学と上智大学の国際教養学部で授業を3コマ持っております。
    両大学の授業ともHRに関する授業で、なかなか専門的なので「本当に学部生でも理解できるのかな?」「面白いと思ってもらえるのかな?」といろいろ考えながらやっています。

    早稲田のクラスは約10ヵ国から90名でそのうち日本人は約半分ほど、上智のクラスは約20ヵ国から70名、日本人は1/3程度と多様性に富んだ学生がそろっています。
    毎週、活発な議論が起こる楽しいクラスなので、私自身もここでかなり学ばせてもらっています。せっかくなので、このクラスで起きたいくつかの出来事を皆さんにもお伝えしたいと思います。

    海外の留学生たちからは評判がよい日本企業の仕組み

    ある時、南米出身の学生が私のところに来てこのようなことを真剣に聞いてきました。
    「私は、日本は素晴らしい国で、日本企業は素晴らしいと思っています。それを学びに来たのに、なぜか日本人学生は日本企業はまるでダメだと否定し、批判ばかりしています。本当に日本も日本企業もダメなのでしょうか?」と。

    実は、私のクラスにいる帰国子女や留学経験のある日本人学生はほとんどが外資系企業への就職を希望しており、日本企業や旧来の日本的雇用に批判的な考えを持つ学生がほとんどです。
    たとえば「終身雇用なんてありえない。年功序列はもっとありえない。日本の給与は安すぎる。残業が多いところには行きたくない…」という感じです。

    このように日本人学生は自国の日本企業に対してネガティブなイメージを持っているのに対し、日本に学びに来ている多くの留学生が日本企業に対して持つイメージは決して悪くはありません

    「家賃補助は素晴らしい。交通費が支給されるのは良い」
    「雇用を長期で考えてくれるのは素晴らしい。安心して働ける」
    「企業が研修してくれるのは良い。特に新入社員研修は素晴らしい!うちの国では最初から結果が出なかったらスグにクビになる」
    と。

    こうした意見は発展途上国から留学している学生だけに限らず、先進国から来た学生からも同様に聴くことがあります。
    海外生活を経験した日本人の学生には、「日本企業で働くということ」イコール「自由がなくなる」と映るようです。
    一方で、不安定な経済の不安を経験したり、自己責任の本当の厳しさを目の当たりにしたりしている留学生からは、「日本企業における雇用の安定」が魅力的に映るのでしょう。
    このような考え方や受け止め方の違いには、いつもとても考えさせられます。

    だけど、ここが『ヘン』だよ、日本の法案

    一方で先日、このようなこともありました。
    労働法の講義の日に今春から施行された働き方改革法案の話をした時のことです。
    学生たちには「皆、最後まで聞けよ。途中で、私に食って掛かるなよ。今から話すことは私自身も『オカシイ』と思っているんだからな。私を攻めるなよ!」と前置きをした上で(笑)。

    そして「2019年4月から、全従業員が年次休暇を5日以上取らなくてはいけなくなったんだ」と話すと、

    「What?!」
    「どういうこと?」
    「強制的に休まされるのか?」
    「ありえないだろう!」

    と、留学生から集中砲火を浴びました(笑)。
    私も全く彼らと同感なのですが、やっぱり、これは人の自由や選択を奪う、理解に苦しむ法案だという話になります。

    他にも、このような質問が飛んできました。

    「なぜ、日本の労働法は従業員をみな時間で管理するようになっているのだ?」
    「法律で縛られているわけでも、就業規則でもないのに、なぜ終身雇用になるのだ?」
    「なぜ、何年たっても年功序列がなくならないのか?」
    「なぜ、女性の管理職比率が伸びないのか(伸びが遅いのか)?」

    留学生が不思議に思うことで、私としてもなかなか理屈では答えられないことが多いのも事実です。

    日本で当たり前と思っていること、結構変わっていると自分で言い聞かせてしまっていることも、学生たちと話していると、今一度考えてみる必要があることを毎週気づかされます。

    プロフィール

    山本紳也
    株式会社HRファーブラ 代表取締役

    HRコンサルタント協会 理事。
    組織・人財マネジメント戦略に関わるコンサルティングに25年以上従事。ビジネス戦略達成のための組織・人財マネジメント、考える組織の開発、グローバル化時代のリーダー開発、M&Aにおける人事サポートなど経験豊富で、活力とイノベーションの生まれる組織と個の新しい関係を生涯の研究テーマとする。上智大学国際教養学部非常勤教授、早稲田大学国際教養学部非常勤講師。イリノイ大学経営学修士課程終了(MBA)、慶應義塾大学理工学部管理工学科卒。主な著書「外国人と働いて結果を出す人の条件」「人事の本気が会社を変える」「21世紀の“戦略型”人事部」など。組織人事に関わる論文・講演は国内外において多数。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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